2009年、米国のディーラーシップ(店舗)及びフランチャイズ(ブランド)は、店舗1,603件、フランチャイズ(ブランド)3,300件、率にして約8%の減少となりました。これはアーバン・サイエンスがデータ収集を行って来た19年間において最大の低下率です。その結果、300万人を超える自動車のオーナーが「孤立者」となり、セールスやサービスのために新しいディーラーシップを求めています。
孤立者は、顧客の囲い込みを目指す自動車メーカーにとっては顧客維持における重要な課題ですが、一方で競合ブランドにとっては「横取り」のチャンスでもあります。顧客のディーラーシップがそのブランドのフランチャイズは失ったものの、競合ブランドの自動車は販売し続けている場合は特にこれが当てはまります。一つだけはっきりしていることは、誰もが孤立者を獲得しようとしている、ということです。
孤立者を自社ブランド内に保持する場合、または他社ブランドの孤立者を取り込む場合でも、成功の確率を高めるためには、以下の三点を意識する必要があります。
1. 顧客利便性
顧客は利便性を求めます。孤立した自動車所有者を保持する、あるいは取り込む可能性を見積もる場合、彼らがどの程度の距離までなら来店しても良いと考えているかを調査する事が重要です。マーケットの調査によって明らかなように、競合他社店舗の展開状況や2番目に近いディーラーまでの距離はマーケット毎に異なります。以下のマップが示すように、2番目に近いディーラーが実際に競合他社の店舗である場合もあります。
ブランドの区域や競合状況の中での孤立者と他のディーラーシップの距離を把握しながら、孤立者へのコミュニケーションを図る必要があります。以下のマップでは、ディーラーシップA(黄色のボックスで表示)が閉鎖されています。同じブランドの他のディーラーシップは水色、同じ自動車メーカーの姉妹ブランドのディーラーシップは赤、競合他社ブランドのディーラーは緑で表示されています。閉鎖されるディーラーの顧客(青い点で表示)の大多数は、姉妹ブランドのディーラーが近くて便利だと考えています。さらに、競合他社のディーラーの方がより便利であると考える顧客も中にはいます。孤立者を保持しようとする自動車メーカーは、そのメーカーのディーラーが最も利便性が高いことを証明する、また実際にそうである必要があります。孤立者に自動車を販売したメーカーが、自社ブランドのネットワークに内のいずれかの店舗にその顧客を再割り当てする前提で顧客維持の可能性を調査する場合には、この事を考慮に入れるべきです。

その後、競合状況の違いに基づき、獲得の可能性の評価はマーケット単位で行われなければなりません。以下の例では、オレンジの棒は閉鎖されるディーラー、緑は次に近い同じブランドのディーラーを示しています。0.5マイルというさほど大きく無い距離の差が、顧客利便性に与える影響という観点で見ると、異なる結果を生み出しています。例えば、マーケット1では0.5マイルの差が顧客利便性に与える影響はほとんどありません。しかしマーケット2では、同ブランドの他店舗へ行き着くために必要な+0.5マイルの圏内に、5件もの競合他社店舗が展開しています。さらに利便性のベンチマークはマーケット毎に異なるということも頭に入れておく必要があります。マーケット1では顧客は最も近いディーラー(ブランドD)まで行くのに平均7.3マイルですが、マーケット2ではこれがわずか3.6マイルとなります。
 
結局のところ、ブランドや自動車メーカーに対するロイヤリティを保つためには、深刻な不便さを被ることになる顧客に対して、その埋め合わせとなるような特典販売なりサービスなりを提供する事になるのかもしれません。一方、競合相手は、その地域での宣伝活動に力を入れる、あるいは購入したターゲット・リストに基づくダイレクト・メール・キャンペーンなどを展開する事により先手を打って孤立者に接触して、現状手に入れたより高い利便性をアピールすることが出来ます。
2. 一貫した対顧客コミュニケーション戦略の開発
孤立者を保持しようとするブランドにとって、単に今までのディーラーの閉鎖のお知らせと、新しいディーラーの紹介をするだけでは不十分です。ブランドへのロイヤリティが非常に高く、たとえ距離が遠くなってもそのブランドのためなら構わないという顧客もいるでしょうが、多くの顧客はより利便性の高い競合他社のオファーに取り込まれてしまいます。
顧客を保持する成功率を高めるため、自動車メーカーは顧客について彼らが所有するデータや知見に基づく的を絞ったキャンペーンを展開し、新たに顧客の受け入れ先となるディーラーとそれらのデータや知見を共有する必要があります。これによりディーラーは的を絞った顧客維持キャンペーンを展開するために役立つ情報で強化されます。例えば多くの自動車メーカーは、ブランドに対する顧客のロイヤリティが高いかどうか、自動車を購入したばかりなのか、自動車の買い換えサイクルのある時点に位置しているのか、また場合によっては、顧客はサービス目的で良くディーラーを利用していたかどうか、ということなどを把握しています。自動車メーカーは、顧客を実用的なグループに分類し、それらの顧客に対する適切なメッセージやインセンティブを開発することができます。マーケット内の顧客においては、利便性やブランドのロイヤリティに基づいて購入時のインセンティブ額を決定するというのも、良いアプローチかもしれません。より最近自動車を購入した顧客に対する変動制サービスの提供に注力するのも一つの手法でしょう。自動車メーカーは企業キャンペーンの他に、ディーラーが活用できるような、的が絞られていて簡単に実施可能なキャンペーンを企画するべきでしょう。豊富な顧客データ、知見及びコミュニケーション・プランをディーラーと共有することで、先進的な自動車メーカーは一貫した、的の絞られたキャンペーンを展開し、孤立者を自らのブランドに向かせ続けることができるのです。
その一方で、孤立者を取り込もうとするブランドは、争奪戦に勝利するため様々な戦略を展開しています。あるブランドは、地域の広告宣伝や購入したターゲット・リストに対するダイレクト・メールによって、下取りにおけるインセンティブや割引サービスをオファーしました。また別のブランドは閉鎖されたディーラー / フランチャイズから販売員を積極的に採用し、彼らの持つ顧客リストを利用しました。孤立者争奪戦に勝ち抜くための戦略として、相対的な利便性や、孤立者の自動車買い換えサイクルのステージに関する利用可能な知見などが考慮された、自動車メーカーとディーラー双方によるからの的の絞られた、包括的なコミュニケーション・プランも実施されるでしょう。
3. マーケティング活動の評価及び最適化
戦略が完成した後は、マーケティング活動を精錬するために、収支を評価する一貫性のある評価基準を開発する事が不可欠です。各キャンペーンにおけるレスポンス・レートの分析や、今回の施策対象者の中から製品やサービスに強い興味を抱いていると思われる見込み顧客を選出し、次回もメッセージ送付やインセンティブ提示の対象者とするための「境界線」の評価は、マーケティング戦略が正しく機能しているかどうかを判断し、施策の成功度合いを測定する多くの方法の内の一つにすぎません。
自社の孤立者を保持しようとしている場合でも、競合他社の孤立者を取り込もうとしている場合でも、成功への鍵はマーケットの地勢に基づいた顧客利便性を考慮し、適切なオファーを決めるために役立つ情報を活用し、時間をかけ、継続的にオファーの内容を最適化する事です。
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